chiteki.1

CHAPTER 3   CARTと……
   

 夕刻過ぎ、最後のC(=カート)に熱中する設楽さんに会いに新千歳モーターランドに向かう。地面をはうようなエンジン音に混ざって、空港から飛び立つジェット機の身体を裂くような高音が響く。緑色のレーシングスーツに赤いシューズ、車体と同じカラーリングのヘルメットを身に付け、別人のようになった設楽さんがそこにいた。  カートは間近で見ると本当に小さい。道内にはまだ4台しかないという125CC、ミッション付のカートに乗り込み、ピットからコースへ走り出していった。1周目、2周目、と周回数をあげる度スピードが増していく。直線、コーナー、クランクとタイヤが鳴り、5、6台いる他のカートを抜いていく。コースのナイター照明にグリーンとオレンジの設楽さんが浮き上がっては、また、暗い中に消えていった。 「前に他のカートがあると熱くなる。がしかし、冷静に抜きにかかる走り方」。カート仲間は設楽さんの走り方をこう表現してくれた。はじめて1年足らずの間で、このコースで3本の指に入るタイムを出しているのだという。目下の夢はF1に乗ること。そしてF1予備軍が大勢いるカートの本場、イタリアやフランスのコースを走ること。



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