『トランスクルージョン』(transclusion) オリジナルから引用を行うときに、単にコピーをしたり、リンクを張るということではなく、オリジナルの任意の部分を、著作者の版権及び改変権を保証し、引用すること。テッド・ネルソンのオリジナルのハイパーテキストのアイデアを支える基本概念。



T:私はコンピュータの分野ではシステム・ヒューマニズム(systems humanism/人間優先の立場からのシステムの構築)の立場で考えています。他の私の知的な仕事に関してはジェネラリストです。

M:他の知的な仕事とはどのようなものですか。

T:哲学や社会科学を戦略的理論で考えていく。基本的にはこれらに何年もとりくんでいます。本を書くということは私の目指していることではないんです。やりたいことはトランスクルーシブ・ハイパーテキストを使うことなのです。これは1960年の時点でも非常に明白なことでした。なぜ当時、他の人がこれを理解出来ないのか解らなかった。WWWでは多くのショップ・ウィンドウ(shop window)があり、誰でも、どこのウィンドウでも、開けて入ることができます。問題は(アメリカなどで管理権を巡って政府機関との確執を生んでいる)、それがアナーキーだったということです。自由で完全に検閲不可能なシステムです。遊び心のある人にとっても、真剣な人にとってもアナーキーなのです。誰もが自分自身の詩を載せたり、あるいは料理のレシピや絵や、何でもシステムにのせられる。どの会社もカタログをのせたりできる。まさに「完全に開かれたシステム」なのです。これは私がザナドゥでやりたかったことと似ています。ザナドゥ・プロジェクトは、この35年間の私の人生の中心でした。ザナドゥはWWWともうひとつの大事な要素から成るはずのものだった。しかし不幸なことに、大きな絵を見ることはできるのですが、短い期間のゴールを設定することができなかった。それは、私にとって平凡過ぎてつまらないことに思えるからです。

M:WWWのような現在のシステムに何が欠けているのですか。

T:トランスクルージョンと呼ばれる概念です。この言葉は、1985年に私が創ったものですが、コンピュータの世界には25年間この言葉が存在しませんでした。コンピュータ分野の多くの人々にとっては隔絶した概念ですが、それは違ったパラダイムに属している概念だからだと思うんです。この6ヶ月間、私はトランスクルージョンの概念をハイパーラボでみんなに毎日毎日説明しています。

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